不貞行為をしていた相手方からの離婚について(最高裁昭和62年9月2日判決)|離婚|法律事例/判例集

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2015/02/20
不貞行為をしていた相手方からの離婚について(最高裁昭和62年9月2日判決)
判例概要
不貞行為をしていた相手方からの離婚について(最高裁昭和62年9月2日判決)
太郎さんと、花子さんは、昭和12年2月1日に婚姻をしました。
2人の間には、子供がいなかったので、梅子さんの子供を太郎さんと花子さんの養子にしました。昭和24年ころ、花子さんは、太郎さんと梅子さんが不倫関係にあることを知りました。昭和24年8月から、太郎さんと梅子さんは一緒に住むようになり、ふたりの間には子供が生まれました。
昭和59年に、太郎さんは、離婚調停を起こしましたが、不調に終わったので、訴訟となりました。
概要と見解ア 離婚は、お互いの合意により成立させることができます。しかし、合意に至らなかった場合は、調停を経てそれでもまとまらなければ裁判をすることになります。
民法では、離婚が認められるための条件が決まっています。その中に、“その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき”という離婚の条件が定められています。でも、夫が浮気をして相手の女性に入れあげて、そのことが妻に判明し、夫婦仲が険悪となった場合、夫から離婚を請求し、妻がそれを拒否しても、離婚が認められるとしたら、それはひどい、と思いませんか。一方で、夫はその後、浮気相手と暮らし、子供もできたにもかかわらず、何年たっても、離婚を請求できない、ということまでは、法律上要求されているようには読めません。

イ そこで、裁判所は、本件で、不貞行為をした者(有責配偶者といわれます。)からの離婚については、慎重に判断をすることとしています。具体的に、このようなケースでは、以下の事実を突き合わせて考えるということを最高裁は本件で示しています。

1 不貞をした者の責任の態様・程度を考慮すべきである

2 離婚を請求された者の
①婚姻継続についての意思
②離婚請求者に対する感情
③離婚を認めた場合における精神的・社会的・経済的状態

3 夫婦間の子、殊に未成熟の子の監護・教育・福祉の状況

4 別居後に形成された生活関係
たとえば夫婦の一方又は双方が既に内縁関係を形成している 場合にはその相手方や子らの状況等

5 時の経過が1~4に与える影響(社会の変化)など

ウ 上記条件については、さらに、わかりやすく、
①別居期間(両当事者の年齢と同居期間と対比)、
②未成熟の子の有無、
③離婚を請求された配偶者が離婚により、極めて過酷な状態に置かれる
など離婚請求を認容することが、著しく社会正義に反するなどの特殊事情を考えますと、最高裁はいっています。
備考1 今回の判例は、東京高等裁判所に差し戻され、
①同居期間8年、別居期間36年と別居が長期に及んでいること
②2人の間に子供がいない
③太郎さんの訴訟活動が悪質とは言えない(太郎さんは、訴訟中に、花子さんも浮気をしていた旨主張していましたが、認められませんでした。)、花子さんの自分が太郎さんの妻であるという自尊心が失われることは、離婚に伴う一般に認められる精神的苦痛にすぎない、花子さんが離婚により、経済的不安な状態に置かれるとしても、それは財産分与や慰謝料により解決されるべきものでありことさら重視すべきではない。
として、離婚が認められました。
なお、慰謝料は1000万円、財産分与1500万円でした。

2 その後判例は、
①別居期間約7年半
②長男29歳、次男24歳
③有責配偶者が、別居後も相手方配偶者や子らの生活費の負担をし、別居後まもなく不貞相手と関係を解消し、離婚請求の際に、誠意の認められる対応をしている、相手方配偶者は、婚姻の継続を望むとしながら、別居後5年半後に、有責配偶者の不動産について処分禁止の仮処分を執行、子らは、2人とも離婚については、当事者の意思に任せる考えである、
という事例で、離婚を認めなかった原審を破棄し、差し戻しとしました(最判平成2年11月8日)

3 また、
  ①同居期間15年別居期間約14年
  ②長女成人し婚姻、長男、次男成人、三男
  ③昭和63年から、毎月15万円、毎年7月と12月は、各40万円を有責配偶者から相手方配偶者に支払い続けていた
   という事例で、離婚を認めた(最判平成6年2月8日)。
判旨5号所定の事由による離婚請求がその事由につき専ら責任のある一方の当事者(以下「有責配偶者」という。)からされた場合において、当該請求が信義誠実の原則に照らして許されるものであるかどうかを判断するに当たっては、有責配偶者の責任の態様・程度を考慮すべきであるが、相手方配偶者の婚姻継続についての意思及び請求者に対する感情、離婚を認めた場合における相手方配偶者の精神的・社会的・経済的状態及び夫婦間の子、殊に未成熟の子の監護・教育・福祉の状況、別居後に形成された生活関係、たとえば夫婦の一方又は双方が既に内縁関係を形成している場合にはその相手方や子らの状況等が斟酌されなければならず、更には、時の経過とともに、これらの諸事情がそれ自体あるいは相互に影響し合って変容し、また、これらの諸事情のもつ社会的意味ないしは社会的評価も変化することを免れないから、時の経過がこれらの諸事情に与える影響も考慮されなければならないのである。

 そうであってみれば、有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできないものと解するのが相当である。
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